【大井武蔵野館に行ってきたよ】
[『YOUNG JAPAN』
▷01 (1998年10月1日発行)掲載]
【文=斎藤浩一 補足=血祭鉄兵】
JR大井町の西口へ出て、正面の通りをま〜っすぐ歩いた突き当り。
そこに名作迷作珍作のメッカ『
大井武蔵野館』があった(1999年1月31日閉館)。
私がここに通い出したのはいつ頃か、はっきりとは憶えていないが、友人が勧めた
『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969年 東映京都 監督:石井輝男 主演:土方
巽)
を目当てに行ったのが最初であることは憶えている。以前、同じ監督の映画で、
『直撃地獄拳 大逆転』(1974年 東映 監督:石井輝男 主演:千葉真一)
を観て一発で気に入ってしまった私は、
石井監督の他の映画に精通している友人から、彼の作品を観るならこれ!
と太鼓判を押されたのが、この『
江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』だったのである。
映画の冒頭、海辺の岩場から、
暗黒舞踏の
土方 巽
(ひじかた たつみ)が、
奇妙なポーズとギラギラした目で、
ズ、ズ、ズ〜ッと画面に迫ってくるところから、もう可笑しくてたまりませんでしたよ。
その後も続々と出てくるキ◯ガイの類い。
それに土方さん(役名:菰田丈五郎)の夢がまたニクイ。
なんたって島全体を世間に蔑ろにされた◯◯◯ものの楽園にしようというものなんだもん。
内容から出てくる人たちまで、こんな調子で充分面白すぎるのに、
石井監督は、そんなことで満足しない人らしい。
ラストシーンがもう凄すぎてダメ押しホームラン級の衝撃が……。
これから観る人のために、あえてラストの内容は書きませんけど、
このラストだけでも観る価値はありますよ。本当に。
いやあ、映画やビデオを観てて死にそうになったのは、
『モンティ・パイソン』や
『Mr.Boo! インベーダー作戦』
を観て以来かな。
もう泣き笑いで目が曇るわ、人生最大のヒドい思い出し笑い
(私は稀代の笑い上戸であるからして……)のため、
大井町駅まで、行きの倍時間がかかったりと、もう大変な目に会いました。
後日読んだ『石井輝男映画魂』(ワイズ出版刊 石井輝男, 福間健二
共著)の中に、
「この映画は土方 巽の映画だ」
という寸評があったけど、私もまったく同意見でしたよ。
その後、まるで何かに取り憑かれたかのように大井町詣でが始まり、
また、この映画館も、まるで私の趣味を見抜いているような粋な特集をドンドン組んできています。
この映画館で他に出会って感慨深かったのは、
キチガ◯代官が隠れキリシタンを徹底的に弾圧し、
嬉々として拷問する
『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』
(1976年 東映 監督:牧口雄二 主演:川谷拓三,
内村レナ)や、
息子の嫁に惚れた変態オヤジが、嫁のノドチンコにクリト◯スを移植する
『
東京ディープスロート夫人』(1975年 東映 監督:向井
寛 主演:田口久美)、
『Gメン75』でも出ていた
倉田保昭主演の
『
武闘拳 猛虎撃殺!』(1976年 東映 監督:山口和彦)
と、レンタルビデオ屋ではまずお目にかかれないイカした作品ばかりで、
今まで邦画に対して偏見があった私の目を覚まさせてくれた
この映画館には感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとう、『大井武蔵野館』!!
(文中敬称略)
Copyright
©Office YOUNG JAPAN 2006-2020,
Most Rights
Reserved.